あとがき
『出たとこロマンサー』、ようやく完結いたしました。
履歴を見ると、約一年間も、同じお話を書いていたんですねー。自分でびっくりしました。
主人公の夢の世界が、ヒロインの空想世界とつながる、というお話は、かなりベタな気がするのですが、ベタはベタなりに、ということで楽しんで書けました。読者の皆様にも、もし楽しんでいただけたのでしたら幸いです。
ところで、今回のお話は、かなり“セカイ系”を意識したものでした。
と言いつつ、本当は自分、あまりセカイ系ってよく分からなかったりします。ウィキペディアで紹介されている「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、『世界の危機』『この世の終わり』など、抽象的な大問題に直結する作品群のこと」といった定義をナナメ読みして「ふんふんなるほど」と頷いたりする程度です。
で、この『出たとこロマンサー』については、当初、セカイ系へのアンチテーゼというわけではないのですが、「ヒロインである芙美子の内的世界でお話が完結するはずなのでセカイ系にはならないはず」と考えてました。なので、夢の世界の舞台も「sekai」をひっくり返して「Iakes」という名前の王国にしたわけです。
ですが、書き進めてみたら何やら“知性無き盲目の魔王”とか“這い寄る混沌”とかご大層な存在が出てきて、すっかりセカイ系な感じになってしまいました(汗)。なお、こいつらは、ご存知の方はすぐ分かってくださったかと思うのですが、いわゆる『クトゥルフ神話体系』に登場する邪神たちであります。透が芙美子のいる場所に至る最後の方の場面も、ラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて』をオマージュさせていただきました。
それでふと思ったんですが、『クトゥルフ神話体系』の小説って、主人公の夢や夜の散歩や古本蒐集みたいなミニマムな事象が世界の危機に直結する辺り、ものすごくセカイ系のような気がします。戦闘美少女は出てきませんけど。
まあ、それはそれとして、次回は世界の危機とかこの世の終わりとかとまったく無関係な、普通にドロドロしたエロ小説を書きたいと思っております。